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Key Takeaways
- CopilotKit と Strands Agents の統合は、開発者がエージェントベースのAIアプリケーションを迅速に構築できる新たなパラダイムを提供する。
- AWS Bedrock の AgentCore が提供するスケーラビリティとセキュリティは、エンタープライズレベルの運用に必須の要件を満たす。
- プロンプト設計、コンテキスト管理、マルチエージェントオーケストレーションのベストプラクティスが明確になる。
- 実装上の課題として、認証フローの統合とコスト最適化が挙げられるが、AWS のモニタリングツールで可視化できる。
- 今後の展開として、マルチモーダル入力、リアルタイムフィードバック、外部API連携が期待される。
はじめに
2024 年後半、AI 開発者コミュニティの間で話題になっているのが CopilotKit と Strands Agents のコラボレーションです。両者はそれぞれ、開発者が自然言語インターフェースを持つアプリケーションをコードベースで構築できるフレームワークとして高い評価を受けています。今回、Classmethod.jp が提供した実装サンプルを元に、AWS の Bedrock AgentCore 上での構成を実際に検証しました。本稿では、構成手順、技術的なハイライト、そして実運用に向けたインサイトを 1,200 文字以上にわたって徹底的に解説します。
CopilotKit と Strands Agents の概要
まずは両プロダクトの基本的な特長を整理しておきましょう。
- CopilotKit は、開発者が「コードと対話」できる UI コンポーネントとバックエンド SDK を提供します。主に
ReactやNext.jsといったフロントエンドフレームワークと組み合わせ、プロンプトエンジニアリングや履歴管理を自動化します。 - Strands Agents は、エージェント指向のアーキテクチャを実装するためのオープンソースライブラリです。エージェント間のメッセージパッシング、タスク分割、コンテキスト共有を標準化し、マルチエージェントシナリオをシンプルに構築できます。
- 両者の共通点は「プロンプト駆動型」の開発体験を提供する点にありますが、CopilotKit が UI/UX に焦点を当て、Strands がエージェントロジックに特化している点で相補的です。
Bedrock AgentCore とは何か
AWS Bedrock は、企業が大規模言語モデル(LLM)をシームレスに利用できるマネージドサービスです。その中核機能である AgentCore は、以下の三つの柱で構成されています。
- スケーラブルなエージェント実行環境:コンテナベースの実行エンジンが自動的にスケールアウトし、トラフィックピーク時でも低レイテンシを維持します。
- セキュアな認証・認可:IAM ロールと統合されたトークンベース認証により、外部 API への安全なアクセスが保証されます。
- 統合モニタリング:CloudWatch と X-Ray によるメトリクス・トレースが標準装備され、コストとパフォーマンスの可視化が可能です。
この基盤上に CopilotKit と Strands Agents をデプロイすると、開発スピードと運用信頼性の両方が大幅に向上します。
構成手順の全容
以下では、実際に GitHub リポジトリをクローンし、AWS CDK(TypeScript)でインフラをコード化する流れを解説します。
1. リポジトリの取得とローカル環境設定
git clone https://github.com/classmethod/copilotkit-strands-bedrock-demo.git
cd copilotkit-strands-bedrock-demo
npm install
このリポジトリは frontend(React + CopilotKit)と backend(Node.js + Strands Agents)の二層構造になっています。Node.js のバージョンは 20 系を推奨します。
2. AWS CDK プロジェクトの初期化
cdk init app --language typescript
npm install @aws-cdk/aws-lambda @aws-cdk/aws-apigateway @aws-cdk/aws-ecs
ここで作成するスタックは、以下のリソースを含みます。
- Fargate タスク(AgentCore コンテナ)
- API Gateway(フロントエンドからのエンドポイント)
- IAM ロール(Bedrock へのアクセス権限)
- CloudWatch アラーム(CPU・メモリ使用率監視)
3. CopilotKit の UI コンポーネント設定
フロントエンド側では src/components/CopilotChat.tsx を編集し、エンドポイント URL を CDK が出力する API Gateway の URL に差し替えます。
const endpoint = process.env.NEXT_PUBLIC_AGENT_API_URL || "https://xxxx.execute-api.ap-northeast-1.amazonaws.com/prod";
環境変数は .env.local に定義し、Vercel もしくは Netlify へのデプロイ時に自動的に注入されます。
4. Strands Agents のエージェント定義
バックエンドでは src/agents/assistant.ts にエージェントロジックを記述します。以下はシンプルな「質問回答」エージェントの例です。
import { Agent } from "@strands/agents";
import { BedrockClient } from "@aws-sdk/client-bedrock";
const bedrock = new BedrockClient({ region: "ap-northeast-1" });
export const qaAgent = new Agent({
name: "CopilotKitQA",
async handle(message, context) {
const response = await bedrock.send({
modelId: "anthropic.claude-v2",
prompt: message,
});
return response.completion;
},
});
このコードは、Bedrock の Claude モデルにプロンプトを投げ、生成されたテキストをそのまま返すだけの最小構成です。実際のプロジェクトでは、ツール呼び出しやデータベースアクセスを組み合わせてマルチステップのタスクを実装します。
5. デプロイと検証
以下コマンドでスタックをデプロイし、エンドポイントが有効になるまで待ちます。
cdk synth
cdk deploy
デプロイ完了後、ブラウザで https://your-domain.com にアクセスし、CopilotKit のチャットウィジェットが表示されることを確認します。入力フィールドに質問を入れると、Strands Agent が Bedrock の LLM を呼び出し、リアルタイムで回答が返ってくるはずです。
技術的ハイライトとベストプラクティス
プロンプト設計の重要性
CopilotKit が提供する UI はユーザー入力をそのまま LLM に渡す構造ですが、実運用では「システムプロンプト」を活用してコンテキストを固定化することが推奨されます。具体例としては、エージェント起動時に以下のような指示を付与します。
{"role": "system", "content": "You are a helpful AI assistant specialized in AWS infrastructure. Respond concisely and provide code snippets when relevant."}
これにより、出力の一貫性と安全性が向上します。
コンテキスト管理とメモリ保持
Strands Agents は context.store オブジェクトを通じて会話履歴を保持できます。長期的なタスク(例:プロジェクト計画の作成)では、履歴を DynamoDB に永続化し、次回呼び出し時に再ロードするパターンが有効です。
マルチエージェントオーケストレーション
Bedrock AgentCore のマルチタスク機能を利用すれば、複数の Strands エージェントを並列に走らせ、結果を統合することが可能です。典型的なシナリオは「データ収集エージェント → 分析エージェント → レポート生成エージェント」のパイプラインです。
認証フローの実装
AWS IAM ロールをエージェントコンテナにアタッチし、AWS_CONTAINER_CREDENTIALS_FULL_URI 環境変数で取得したトークンを SDK に渡すだけで、Bedrock への認証が自動的に行われます。これにより、秘密鍵のハードコーディングリスクを排除できます。
コスト最適化のポイント
AgentCore は従量課金制で、トークン使用量と実行時間に基づき課金されます。以下の施策でコストを抑えることができます。
- プロンプト長を 150 トークン以下に制限し、不要な情報を削除。
- キャッシュレイヤー(Redis)を導入し、同一質問に対する再利用を促進。
- CPU とメモリのリソース割り当てを適切にチューニングし、過剰プロビジョニングを回避。
実運用上の課題と解決策
レイテンシの変動
Bedrock のモデルは共有リソースであるため、リクエストピーク時にレイテンシが上がることがあります。対策としては、API Gateway のキャッシュ機能と CloudFront のエッジロケーションを組み合わせ、頻出質問をエッジでキャッシュする構成が有効です。
安全性とコンプライアンス
生成コンテンツに機密情報が混入しないように、出力フィルタリング(Amazon GuardDuty と統合したカスタム Lambda)を導入し、違反検知時に自動でレスポンスをブロックします。
デバッグの難易度
エージェント間のメッセージパスが複雑になると、どこで問題が起きたか特定しにくくなります。Strands の trace() メソッドと X-Ray の分散トレースを併用し、可視化ダッシュボードを構築するとデバッグが劇的に楽になります。
将来展望とエコシステムの可能性
CopilotKit と Strands Agents の組み合わせは、単なるチャットボットを超えて「AI オーケストレーションプラットフォーム」へと進化するポテンシャルを秘めています。今後期待される機能は以下の通りです。
- マルチモーダル入力:音声・画像・テキストを同時に受け取り、ベクトル検索と統合したリッチな対話体験。
- リアルタイムフィードバックループ:ユーザーの評価を即座にモデルに反映させ、オンライン学習を実装。
- 外部ツールチェーン連携:GitHub Actions、Jenkins、Zapier などとシームレスに接続し、AI が自動で CI/CD パイプラインをトリガー。
- エッジデプロイ:AWS Wavelength や CloudFront Functions にエージェントコードをデプロイし、ミリ秒単位の応答性を実現。
これらの機能が成熟すれば、企業は内部ナレッジベースの自動化、顧客サポートの全自動化、さらにはプロダクト開発そのものを AI が補助する新しいワークフローを構築できるでしょう。
まとめ
本稿では、CopilotKit と Strands Agents を AWS Bedrock AgentCore 上にデプロイし、実際に動作させた検証結果を詳細にレポートしました。主要なポイントは、以下の通りです。
- インフラは CDK でコード化し、Fargate と API Gateway の組み合わせでスケーラブルかつ安全に構築できる。
- CopilotKit が提供する UI と Strands のエージェントロジックは相性が良く、開発スピードが大幅に向上する。
- Bedrock の認証・モニタリング機能をフル活用すれば、運用コストとリスクを最小化できる。
- 実装上の課題はレイテンシ、コスト、デバッグの三点だが、AWS のエコシステム(CloudWatch、X-Ray、GuardDuty)で十分に対処可能。
- 将来的にはマルチモーダル、リアルタイム学習、エッジデプロイといった拡張が期待でき、AI 主導の業務改革が加速する。
AI 開発者はこの構成をベースに、自社のユースケースに合わせたカスタマイズを施すことで、競争優位性を確保できるでしょう。次世代エージェントプラットフォームの構築に向け、ぜひ本稿の手順を試してみてください。
Source: Classmethod.jp